レッスン 2 12分

カスタム指示の仕組み

カスタム指示がAI内部でどう処理されるか — 優先順位の階層、メモリとの違い、日本語トークンの特性を理解します。

レッスン1で、カスタム指示がAIへの「永続的な自己紹介」であることを学びました。このレッスンでは、その自己紹介がAIの内部でどう処理されるかを掘り下げます。

優先順位の階層

AIは複数の指示を同時に受け取っています。どれが優先されるかを理解すると、なぜ「設定したのに無視される」問題が起きるかがわかります。

① システムプロンプト(プラットフォーム側の基本ルール)
  └── ② カスタム指示 / プロジェクト指示
        └── ③ 会話の文脈(過去のメッセージ)
              └── ④ 今回のプロンプト(直接の質問)

ルール: 番号が大きいほど優先度が高い。つまり「今回のプロンプト」が最も強い指示です。

カスタム指示に「200文字以内で答えて」と書いていても、プロンプトで「この論文を詳しく分析して」と入力すれば、AIは長文で応答します。これはバグではなく設計どおりの動作です。

Quick Check: カスタム指示に「箇条書きで答えて」と設定しました。プロンプトで「物語形式で説明して」と入力したらどうなりますか?(物語形式で応答されます。プロンプトはカスタム指示より優先順位が高いからです。)

カスタム指示 vs メモリ vs プロジェクト

3つの仕組みは似ているようで、まったく違います。

機能設定者持続性用途
カスタム指示ユーザーが手動で書くすべての新しい会話に適用基本ルール(トーン・形式・役割)
メモリAIが会話から自動学習蓄積型(会話を重ねるほど増える)ユーザーの好みや背景を記憶
プロジェクトユーザーがプロジェクト単位で設定そのプロジェクト内のみ業務別の専用設定 + 参考ファイル

メモリの落とし穴: ChatGPTのメモリは便利ですが、カスタム指示と矛盾することがあります。たとえばカスタム指示に「ですます調で」と書いていても、以前の会話で「レポートだからだ・である調で」と依頼した記録がメモリに残ると、AIがトーンを迷いはじめます。

対策: 設定 → 個人設定 → メモリ を定期的に確認して、矛盾する項目を削除しましょう。

日本語のトークン効率

ここが日本語ユーザーにとって非常に重要なポイントです。

トークンとは: AIがテキストを処理する最小単位です。英語では1語≒1トークンですが、日本語では1文字が1〜3トークンになることがあります。

実例:

英語: "Please summarize this report"  → 約5トークン
日本語: "このレポートを要約してください"  → 約12〜15トークン

カスタム指示の文字数制限は約1,500文字(ChatGPTの場合)。英語なら300語相当書けますが、日本語では実質100〜150語程度です。

効率的に書くコツ:

  • 「〜してください」→「〜して」(丁寧さは意味に影響しない箇所で省略)
  • 修飾語を削る:「できるだけ簡潔に」→「200文字以内」
  • 数値で指定:「短めに」→「3行以内」
  • キーワード部分は英語OK:「bullet points」「conclusion first」

Quick Check: 日本語カスタム指示で「必要に応じて適切な長さで丁寧にお答えください」と書くのと「結論先。200文字。箇条書き。」と書くの、どちらが効果的ですか?(後者です。AIにとって前者は「何も指定していない」のとほぼ同じです。具体的な数値やフォーマット指定が効果を発揮します。)

丁寧さのパラドックス

早稲田大学と理化学研究所の2024年の研究(尹子旗ら)で面白い結果が出ています:

  • カジュアルなプロンプト → 推論精度が高い
  • 丁寧なプロンプト → 応答が長く詳しい

つまり「正確な回答」と「丁しい回答」でトレードオフがあるのです。

実践ルール: カスタム指示では指示的+最低限の丁寧さの組み合わせがベスト。

  • ✓ 「結論先。ですます調。200文字以内。」(指示的 + 結果の丁寧さ)
  • ✗ 「お忙しいところ恐れ入りますが、できれば結論からお話しいただけると助かります」(入力が丁寧すぎて指示が曖昧)

まとめ

  • AIはプロンプト > カスタム指示 > システムプロンプトの優先順位で処理する
  • カスタム指示(手動・固定)、メモリ(自動・蓄積)、プロジェクト(業務別)は別物
  • 日本語は英語の2〜3倍トークンを消費するため、簡潔に書く技術が重要
  • 丁寧さのパラドックス:指示は簡潔に、出力のトーンだけ丁寧に設定する

次のレッスン

仕組みがわかったところで、レッスン3ではRISENフレームワークを使って実際にカスタム指示を書いてみます。最初の1セットをゼロから完成させましょう。

理解度チェック

1. カスタム指示とプロンプト(質問文)が矛盾した場合、AIはどちらを優先しますか?

2. ChatGPTのメモリ機能とカスタム指示の違いは何ですか?

3. 日本語テキストは英語と比べてトークン消費量がどう違いますか?

すべての問題に答えてから確認できます

まず上のクイズを完了してください

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