OpenAIが新型のGPT-5.6モデルに「Sol(ソル)」「Terra(テラ)」「Luna(ルナ)」と命名した際、日本では「あ、2022年に大暴落したあの暗号資産の名前だよね?」と首をかしげる人が多かったのではないでしょうか。しかし、これらの名前に金融市場とは無関係です。太陽、地球、月を指しており、OpenAIがモデルの性能を一目で把握できるようにした新しいネーミング体系です。仕組みが頭に入ると、これまで続いてきた「4o」「o3」「5.5」といったアルファベットと数字の羅列よりも、実はずっとシンプルで直感的だと気づくはずです。
【2026年7月10日更新】ついに解放されました。 米政府の審査を経て2週間のゲート内に閉じ込められていましたが、OpenAIは7月9日、GPT-5.6(Sol、Terra、Luna)を一般公開しました。ChatGPT、Codex、APIを通じての利用が可能となり、展開はグローバルで24時間以内に完了する見込みです。すでにモデル選択メニューに追加されているはずです。本ガイドは、実際のプラン別の対応表と最終的な公開時の数値で更新されています。

仕組みがすっと頭に入るたった1つのアイデア
GPT-5.6は単一のモデルではなく、3つのモデルからなるファミリーです。名前は「高速・低コスト」から「低速・圧倒的精度」までを階段のように表しています。
頭に入れるべき基本構造はこうです。Sol=太陽=最も明るく強力、Luna=月=軽量で素早い、Terra=地球=堅実なミドル。数字の「5.6」は世代を示し、名前は性能のグレードを示します。長期的に見て賢いのは、OpenAIが各グレードを独立したスケジュールでアップデートできる点です。安価なモデルが次回バージョンで性能向上しても「Luna」のままなので、ユーザーは新しい名前を覚える必要がありません。日本のビジネス現場でも、名前が変わるたびに設定や契約書を見直す手間が省けるのは大きなメリットです。
Sol(ソル)—— 重厚なハイエンドモデル
Solは、ハードルが高い問題のために設計されました。本格的なソフトウェア開発、科学技術研究、サイバーセキュリティ分析、そして多くの手順を踏んで計画を立てる必要がある「エージェント(自律型作業)」タスクなどが代表例です。ここで耳にする新しい「effort(処理強度)」設定が2つあります。maxは、Solに即答させるのではなく、難題に対して深く考える時間を与えます。複雑なバグの特定や、多数の条件が絡む意思決定に有効です。ultraはさらに先へ進みます。デフォルトで4つのAIエージェントが並列でタスクを処理し、結果を統合する仕組みです(API経由では最大16まで拡張可能)。大規模な業務を小さなチームに委ね、自ら監督するようなイメージです。OpenAIの公開数値によると、ultraモード使用時、SolのTerminal-Bench(厳格なコマンドラインベンチマーク)スコアは88.8%から91.9%に向上しました。ただし、使用量クレジットを劇的に消費します。初期ユーザーの証言では、ultraモードで数分使うだけで、5時間分のクレジットが大半消えたとの報告も。本当にチームで取り組む価値のある仕事に限定して使いましょう。さらに、通常チャットではProおよびEnterpriseプラン限定で最高品質のSol Proバリエーションも用意されています。
Terra(テラ)—— 実際に最も使うことになりそう
Terraは、地味ながら頼もしい存在です。OpenAIは「日常の業務に最適なバランス型モデル」と位置づけており、GPT-5.5と同等の性能を約半分のコストで提供します。文章作成、要約、計画立案、質問への回答など、大多数の一般的なタスクには十分すぎる性能です。また、無料層の切り札でもあります。FreeおよびGoプランユーザーは、ChatGPT WorkおよびCodex内でTerraを利用できます。新規の最先端世代モデルが公開初週から無料アカウントに届くのは史上初です。Solが難易度の高いケースで呼ぶ専門家がもし、Terraは毎日使う頼れる総合職だとイメージすると分かりやすいでしょう。日本の事務作業やメールのドラフト作成など、日常的なAI活用において最も活躍するモデルになるはずです。
Luna(ルナ)—— 高速で低コスト
Lunaは速度と大量処理のために作られました。最も軽量で低コストなオプションです。最も深い回答よりも、即座の返答を重視する短いやり取りや、ルーチンワークに最適です。短文の書き換え、素早い情報検索、簡易な下書き作成——これらがLunaの得意分野です。API経由でバッチ処理を行う際など、コストを抑えつつ高速な応答が必要な際に真価を発揮します。
どのプランにどのモデルが割り当てられるか—— 実際の対応表
これらのグレードは単なる概念ではなく、実際の利用環境が決まっています。OpenAIの利用可能状況の公式情報に基づき、以下の通りです。
通常チャット内: Plus、Pro、Business、EnterpriseはSol(medium effort以上)を利用可能。ProとEnterpriseはSol Proも利用可能。FreeとGoは通常チャットでは引き続きGPT-5.5 Instantが搭載されています。
ChatGPT WorkおよびCodex内: FreeとGoユーザーもTerraを利用可能—— はい、無料ユーザーでも公開初週から5.6世代のモデルが使えます。有料プランはSol、Terra、Lunaから選択でき、各自専用のeffortダイヤルが用意されています。max設定は5.6にアクセスできる全員がオンにできます。新しい最高設定のultraは、ChatGPT WorkではProとEnterpriseに限定、CodexではPlus以上が利用可能です。
| 利用場所 | Free / Go | Plus | Pro / Enterprise |
|---|---|---|---|
| 通常チャット | GPT-5.5 Instant(5.6なし) | Sol(medium以上) | Sol、さらに Sol Pro |
| ChatGPT Work・Codex | Terra | Sol・Terra・Luna+努力度 | Sol・Terra・Luna+努力度 |
| max設定 | — | ✓(切替可) | ✓(切替可) |
| ultra設定 | — | Codexのみ | ✓ Work・Codex両方 |
無料ユーザーがGPT-5.6にアクセスできる唯一の窓口は、エージェント機能付きの画面——つまりChatGPT WorkとCodexです。通常チャットではありません。PlusプランはProプランよりも一段階下に位置し、Sol Proの利用ができず、ChatGPT Work内でもultraが使えません。公開初週はPlusユーザーでTerraとLunaのみが表示されていたケースもありましたが、段階的展開が完了し次第解消されます。該当する方は1日置いてから改めてご確認ください。
APIの料金体系
アプリ開発やシステム統合でAPIを利用する場合、3つのグレードは「価格と品質の調整ダイヤル」となります。Sol $5 / $30、Terra $2.50 / $15、Luna $1 / $6(入力トークン / 出力トークンあたりの100万トークン単位)。SolはGPT-5.5と同価格です。フラッグシップモデルの半額で提供されるTerraが注目ポイントであり、Lunaは低コストで高頻度の呼び出しに最適です。新しいプロンプトキャッシュのルール(最小キャッシュ保持期間30分、キャッシュ書き込みは1.25倍課金)が適用され、ultraを支えるマルチエージェント構成はResponses API内でベータ版として提供中です。日本のSaaS開発現場でも、キャッシュ活用の設計を今一度見直すタイミングになると言えるでしょう。
公開直後のベンチマーク結果—— その数字をどう解釈すべきか
OpenAIは公開と同時に詳細な比較表を掲載しました。以下は主要な項目を抜粋したものです。OpenAIが自らの勝利だけを取り繕うのではなく、負け組とされる項目も含めて正直に紹介しています。
| ベンチマーク(測定内容) | Sol | Terra | Luna | GPT-5.5 | Claude最高値 |
|---|---|---|---|---|---|
| Agents’ Last Exam(長時間の専門ワークフロー) | 52.7% | 50.4% | 50.3% | 46.9% | 45.2%(Opus 4.8) |
| Coding Agent Index(自律コーディング・独立系) | 80 | 77.4 | 74.6 | 76.4 | 77.2(Fable 5) |
| Terminal-Bench 2.1(コマンドライン作業) | 88.8%(ultra 91.9%) | 87.4% | 84.7% | 85.6% | 88%(Mythos 5) |
| OSWorld 2.0(コンピュータ操作) | 62.6% | 50.2% | 45.6% | 47.5% | 54.8%(Opus 4.8) |
| SWE-Bench Pro(実際のソフト修正) | 64.6% | 63.4% | 62.7% | 59.4% | 80.3%(Mythos 5) |
| GDPval-AA(専門家が評価する仕事の品質) | 1,747.8 | 1,593 | 1,591.8 | 1,493.7 | 1,759.6(Fable 5) |
| Artificial Analysis Intelligence Index | 58.9 | 55 | 51.2 | 54.8 | 59.9(Fable 5) |
全体として読み解くと、Solはエージェント型ワークやコンピュータ操作面で首位を走り、Claudeは深いソフトウェアエンジニアリング分野で依然として首位を維持し、広範な品質指標の2つでもわずかな優位性を保っています。どのモデルも全項目を席巻したわけではありません。静かながらも重要なのは、Lunaが前世代のフラッグシップモデルを複数の項目で上回っている点です—— しかもLunaは無料層のモデルです。
ここで重要な免責事項です。表以上の注意が必要です。 これらの数値はOpenAI自身の公開記事から来ています。ベンダーはどのベンチマークを掲載し、どの競合を比較対象に含め、どのような設定でテストするかを自由に選べます。先ほどの91.9%という数字は、Solをultraモード(4つのエージェントを同時に走らせて使用量を消費する設定)で計測した結果であり、あなたが火曜日の通常業務で使うSolとは異なります。さらにベンチマークは「試験場」の条件です。入力が整っており、目標が明確で、社内政治や曖昧な文脈がありません。実際のあなたの現場は情報が不足し、文脈が複雑で、リーダーボードでは測れない要素に満ちています。チャート上で3ポイント高いモデルが、実際のあなたの業務では劣っている可能性は十分にあります。速度、トーン、ファイルの扱い方、あるいはあなたの業界特有の hallucination(幻覚・誤回答)の頻度によって、実務適合度は大きく変わるからです。
両方の側面を理解させるために、独自のデータポイントを1つ追加します。AIコードエディタのCursor——この競争に利害関係のない企業——は独自ベンチマークCursorBenchを公開しています。これは実際のユーザーセッションから構築されたもので、曖昧で複数ファイルにまたがるタスクを含む、試験場の真逆の環境です。現在バージョンでは、Claude Fable 5 Maxが70.5%で最高スコアですが、モデル費用は$17.32。そのわずかに下回るGPT-5.6 Sol Maxは67.2%で、費用はわずか$5.22。実務に近い評価ではClaudeがわずかに品質でリードしていますが、Solは価格で圧倒的に勝利しています。どちらが重要かは、あなたがトークンごとに課金するかどうかに完全に依存します。
決着をつける唯一のベンチマークは、あなた自身の1週間のタスクです。今日の主力モデルとSolで、同じ実務タスク3つを回してみてください。そして、最も管理の手間が少なかった方を選べばいいのです。
あなたにとっての現実的なメリット
- カジュアルユーザーの場合: 基本的には気にする必要はありません。ChatGPTが最適なグレードを自動で選んでくれます。もし手動で選ぶ機会があれば「Sol」が高性能版であることだけ知っておけば十分です。また、無料アカウントではGPT-5.6は通常チャットではなくChatGPT Workに搭載されている点も覚えておきましょう。
- ChatGPTで本格的な作業を行う場合(コーディング、分析、リサーチ):Solの「max」設定がすべての有料プランで利用可能になりました。難関タスクのデフォルトとして使いましょう。「ultra」は、4つのエージェントを回す価値があり、その分コストも跳ね上がる稀な案件に限定して使用してください。
- アプリ開発やコスト管理を担う場合: Sol $5/$30、Terra $2.50/$15、Luna $1/$6(100万トークンあたり)。フラッグシップの半額で提供されるTerraが注目ポイントであり、Lunaは低コスト高頻度呼び出しに最適です。
- 名前だけで混乱したくない場合: 太陽、地球、月——最も明るい順に並んでいます。これだけで構造は理解できます。
これらの階層で「解決しない」こと
- 弱いプロンプトを賢くはしてくれません。 Solに曖昧な質問を投げて、曖昧な答えが返ってこないわけではありません。グレードを選ぶより、クリアな指示出しの方が重要です。
- 単純なチャットですべてが違うわけではありません。 日常の質問であれば、TerraとSolの出力差を見極めるのは難しいでしょう。違いが明確に表れるのは、難易度が高く多段階の作業です。
- すべてが無料になるわけではありません。 無料アカウントはChatGPT WorkとCodex限定でTerraが利用可能。Solは有料プラン必須。Sol ProやWork内のultraはPro以上またはEnterprise限定です。
- あなたの専門知識を代替するわけではありません。 性能が高いモデルでも、あなたの業界や社内ルールは知りません。下書きや提案をするのはAI、最終判断を下すのはあなたです。日本のビジネス文書作成においても、社内用語や敬語の微調整は人間の目が不可欠です。
まとめ
Sol、Terra、Lunaは暗号資産の名前でも、ギミックでもありません。世代番号(5.6)とグレード名が分離された、明確な「良 / 更良 / 最良」の階段です。難題にはSol、日常業務にはTerra、高速低コストにはLuna。7月9日より全員が利用可能になりました。各モデルがあなたのアカウントでどこに位置するかは上記のプラン表をご確認ください。公開直後のベンチマークは「 verdict(判決)」ではなく「menu(選択肢)」と捉え、実際の業務でどれが勝つかを自分で決めましょう。
7月9日の2回の公開は、実は2つの扉を持つ1つの物語でした。エージェント機能に魅力を感じているなら、Terraが真価を発揮するChatGPT Workとは何かに関する解説ガイドがおすすめです。また、ChatGPT WorkとClaude Coworkの比較がエコシステムの選択に役立ちます。まだGPT-5.6をすでに使えるのかと迷っているなら、答えはYesです。そして、どんなネーミングの変化にも勝つスキルは、モデルを適切に選んでプロンプトを設計すること——AI入門やChatGPT仕事術でその基礎を固めましょう。
参考資料
- GPT-5.6: Frontier intelligence that scales with your ambition — OpenAI(2026年7月9日)
- Previewing GPT-5.6 Sol — OpenAI(2026年6月26日)
- ChatGPT is now a partner for your most ambitious work — OpenAI(2026年7月9日)
- OpenAI rolls out GPT-5.6 to the public on July 9 — Engadget
- CursorBench: model evals on real Cursor sessions — Cursor